生態

日本にツキノワグマは何頭生息しているのか?|地域個体群と個体数

地域個体群

 ツキノワグマの地域個体群は、地理的・生態的要因によって分かれた個体群のことです。環境省のガイドラインでは、日本のツキノワグマは本州と四国に生息し、地域ごとに遺伝的特徴や生息環境が異なります。特に四国個体群は個体数が10数頭とされ、絶滅の危機に瀕しています。また、かつて九州にも生息していましたが、現在は絶滅したと考えられています。こうした地域個体群の保全には、生息地の保護や分断の解消が不可欠です。環境省や各自治体は、モニタリングや保護管理計画を策定し、クマと人の共存を目指した対策を進めています。

東北地方

青森県

 青森県内のツキノワグマの個体数はカメラトラップ調査により、1,614頭と推定されています。地域別では、下北半島ユニットでは345頭、北上山地ユニットでは33頭、北奥羽ユニットでは140頭、白神山地ユニットでは1,043頭、津軽半島では53頭と推定されています。

青森県のツキノワグマの推定個体数

都道府県
(地域)
推定時期推定個体数
下北半島ユニット2024年345頭
北上山地ユニット33頭
北奥羽ユニット140頭
白神山地ユニット1,043頭
津軽半島53頭
合計1,614頭

岩手県

 岩手県内のツキノワグマの個体数はヘア・トラップ調査により、1,937~3,861頭(中央値2,718頭)と推定されています(岩手県,2024)。地域個体群別では、北上山地では629~1,589頭(中央値996頭)、北奥羽では1,308~2,272頭(中央値1,722頭)と推定されています。

岩手県のツキノワグマの推定個体数

都道府県
(地域)
推定時期推定個体数
(中央値)
北上山地2019~2020年629~1,589頭
(996頭)
北奥羽2018年1,308~2,272頭
(1,722頭)
合計1,937~3,861頭
(2,718頭)

宮城県

 宮城県内のツキノワグマの個体数はカメラトラップ調査により、1,618~6,327頭(中央値4,400頭)と推定されています(宮城県,2022)。

宮城県のツキノワグマの推定個体数

都道府県
(地域)
推定時期推定個体数
(中央値)
宮城県20221,618~6,327頭
(3,147頭)

秋田県

 秋田県内のツキノワグマの個体数はカメラトラップ調査により、2,800~6,000頭(中間値4,400頭)(令和2年4月時点)と推定されています(秋田県,2022)。

秋田県のツキノワグマの推定個体数

都道府県
(地域)
推定時期推定個体数
(中間値)
秋田県2017~2019年2,800~6,000頭
(4,400頭)

山形県

 山形県内のツキノワグマの個体数は2,300頭(2021年4月時点)と推定されています(山形県,2022)。

山形県のツキノワグマの推定個体数

都道府県
(地域)
推定時期推定個体数
山形県2021年4月2,300頭

福島県

 福島県内のツキノワグマの個体数はカメラトラップ調査により、4,425~7,116頭(平均値5,576頭)と推定されています(福島県,2022)。

福島県のツキノワグマの推定個体数

都道府県
(地域)
推定時期推定個体数
(平均値)
福島県20204,425~7,116頭
(5,576頭)

関東地方

栃木県

 栃木県内のツキノワグマの個体数は422~790頭(中央値 606頭)と推定されています(栃木県,2020)。

栃木県のツキノワグマの推定個体数

都道府県
(地域)
推定時期推定個体数
(中央値)
越後三国2019422~790頭
(606頭)

群馬県

 群馬県内のツキノワグマの個体数は越後三国地域個体群では1,512頭(中央値)、関東山地地域個体群では510頭(中央値)と推定されています(群馬県,2022)。

群馬県のツキノワグマの推定個体数

都道府県
(地域)
推定時期推定個体数
(中央値)
越後三国20201,512頭
関東山地2020510頭

埼玉県

 埼玉県内のツキノワグマの個体数は2021年度に実施された調査により、150~176頭と推定されています。

埼玉県のツキノワグマの推定個体数

地域推定時期推定個体数
埼玉県2021年度150~176頭

東京都

 東京都内のツキノワグマの個体数(関東山地地域個体群)は2020年度に実施されたヘアトラップ調査により、128~181頭(平均値 161頭)と推定されています。

地域推定時期推定個体数
(平均値)
東京都2020年度128~181頭
(161頭)

神奈川県

 神奈川県内のツキノワグマの個体数について、情報を確認することができませんでした。

中部地方

新潟県

 新潟県内のツキノワグマの個体数は令和3~4年度に実施されたカメラトラップ調査により、369~3,669頭(中央値1,118頭)と推定されています(新潟県,2022)。各地域個体群ごとの個体数は、月山・朝日飯豊地域個体群では432頭、越後三国地域個体群では465頭、北アルプス地域個体群では218頭と推定されています。

新潟県のツキノワグマの推定個体数

地域推定時期推定個体数
(中央値)
月山・朝日飯豊令和5年12月末432頭
越後三国465頭
北アルプス218頭
合計369~3,669頭
(1,118頭)

富山県

 富山県内のツキノワグマの個体数は2019年度に実施されたカメラトラップ調査(階層ベイズモデル)により、1,460頭(2018年度末時点)と推定されています(富山県,2024)。

富山県のツキノワグマの推定個体数

地域推定時期推定個体数
(中央値)
富山県2019年度1,460頭

石川県

 石川県内のツキノワグマの個体数(幼獣・成獣)は2020年度・2021年度に実施された直接観察・マルコフ連鎖モンテカルロ法を用いた階層ベイズモデルにより、440~3,643頭(中央値 1,201頭)と推定されています。そのうち、成獣の個体数は326~2,696頭(中央値 889頭)と推定されています(石川県,2022)。

地域推定時期推定個体数
(中央値)
石川県
(幼獣・成獣)
2020年度
2021年度
440~3,643頭
(1,201頭)
石川県
(成獣)
326~2,696頭
(889頭)

福井県

 福井県内のツキノワグマの個体数は2019~2020年度に実施されたヘアトラップ調査により、610~1,040頭と推定されています。各地域ごとの個体数は嶺北地域では370~800頭、嶺南地域では230~240頭と推定されています。

福井県のツキノワグマの推定個体数

地域推定時期推定個体数
(中央値)
嶺北地域2019年度
2020年度
370~800頭
嶺南地域230~240頭
合計610~1,040頭

山梨県

 山梨県内のツキノワグマの個体数は2020年度に実施された調査により、527頭と推定されています(山梨県,2022)。地域個体群別では、富士・丹沢個体群別は158頭、中央・南アルプス地域個体群別は180頭、関東山地地域個体群は189頭と推定されています。

山梨県のツキノワグマの推定個体数

地域推定時期推定個体数
(中央値)
富士・丹沢2020年158頭
中央・南アルプス180頭
関東山地189頭
合計

長野県

 長野県内のツキノワグマの個体数は2020年度に実施された調査により、3,831~10,128頭(7,270頭)と推定されています。地域個体群別では、長野北部地域では717~1,869頭
(1,361頭)、越後・三国地域では951~2,513頭(1,804頭)、北アルプス北部地域では387~1,023頭(734頭)、関東山地地域では178~470頭(339頭)、北アルプス南部地域では752~1,989頭(1,427頭)、中央アルプス地域では545~1,442頭(1,035頭)、南アルプス地域では178~472頭(339頭)、八ヶ岳地域では122~322頭(231頭)と推定されています。

長野県のツキノワグマの推定個体数

地域推定時期推定個体数
(中央値)
長野北部2020年717~1,869頭
(1,361頭)
越後・三国951~2,513頭
(1,804頭)
北アルプス北部387~1,023頭
(734頭)
関東山地178~470頭
(339頭)
北アルプス南部752~1,989頭
(1,427頭)
中央アルプス545~1,442頭
(1,035頭)
南アルプス178~472頭
(339頭)
八ヶ岳122~322頭
(231頭)
合計3,831~10,128頭
(7,270頭)

岐阜県

 岐阜県内のツキノワグマの個体数は2914~4693頭(中央値3,708頭)と推定されています。各地域個体群ごとの個体数は白山・奥美濃地域個体群では973~1,629頭(中央値1,263頭)、北アルプス地域個体群では1,941~3,064頭(中央値2,445頭)と推定されています。

岐阜県のツキノワグマの推定個体数

地域推定時期推定個体数
(中央値)
白山・奥美濃2022年度973~1,629頭
(1,263頭)
北アルプス1,941~3,064頭
(2,445頭)
合計2,914~4,693頭
(3,708頭)

静岡県

 静岡県内のツキノワグマの個体数について、情報を確認することができませんでした。

愛知県

 愛知県内のツキノワグマの個体数について、情報を確認することができませんでした。

三重県

 三重県内のツキノワグマの個体数について、情報を確認することができませんでした。

滋賀県

 滋賀県内のツキノワグマの個体数は121~512頭(中央値316頭)と推定されています。各地域個体群ごとの個体数は湖北個体群(白山・奥美濃地域個体群)では63~266頭(中央値164頭)、湖西地域個体群(北近畿地域個体群)では58~246頭(中央値152頭)と推定されています。

地域推定時期推定個体数
(中央値)
湖北個体群
(白山・奥美濃地域個体群)
2016年度
2019年度
2021年度
63~266頭
(164頭)
湖西個体群
(北近畿地域個体群)
58~246頭
(152頭)
合計121~512頭
(316頭)

近畿地方

近畿北部地域(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県)

 近畿北部地域個体群のツキノワグマは、主に福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県(北部地域)に生息しています。

 最新の調査によれば、2020年の近畿北部地域個体群のツキノワグマの生息数は528~1,261頭(中央値814頭)と推定されています。 また、推定増加率は11.1〜20.9%(中央値16.0%)と推定されています。

近畿北部地域個体群のツキノワグマの推定個体数

推定時期推定個体数
2020年528~1,261頭
(中央値814頭)

 保護管理の取り組みとして、「近畿北部・東中国ツキノワグマ広域保護管理協議会」を設立し、広域的な保護管理が実施されています。

東中国地域(兵庫県・鳥取県・岡山県)

 東中国地域個体群のツキノワグマは、主に鳥取県東部から兵庫県北西部までと岡山県北東部にまたがる地域に生息しています。

 最新の調査によれば、2020年の東中国地域個体群のツキノワグマの個体数は651~1,093頭(中央値844頭)と推定されています。 かつては絶滅が危惧されていましたが、各県で実施されてきた捕獲制限や放獣体制の構築などにより、個体数は大幅に改善しました。

東中国地域個体群のツキノワグマの推定個体数

推定時期推定個体数
2020年651~1,093頭
(中央値844頭)

 保護管理の取り組みとして、「近畿北部・東中国ツキノワグマ広域保護管理協議会」を設立し、広域的な保護管理が実施されています。

中国地方

西中国地域(島根県・広島県・山口県)

 西中国地域個体群のツキノワグマは、島根県、広島県、山口県の西中国山地を中心に生息しています。この個体群は他の地域から孤立して分布しており、1960年代からの針葉樹の植林などによる生息環境の悪化と捕獲圧の増加により絶滅が懸念されていました。そのため、1994年度以降、国によって狩猟が禁止されています。

 最新の調査によれば、2020年9月末の西中国地域個体群のツキノワグマの個体数は767~1,946頭(中央値1,307頭)と推定されています。

西中国地域個体群のツキノワグマの推定個体数

推定時期推定個体数推定方法
2020年9月末767~1,946頭
(中央値1,307頭)
カメラトラップ
(225台)

 保護管理の取り組みとして、2004年度以降は島根県、広島県、山口県の3県は共同で「西中国山地ツキノワグマ保護管理対策協議会」を設立し、広域的な保護管理が実施されています。

四国地方

四国地域(徳島県・高知県)

参考文献

秋田県

  • 秋田県.2022.秋田県第二種特定鳥獣管理計画(第5次ツキノワグマ).秋田県,秋田市,17pp.

岩手県

  • 岩手県.2024.第5次ツキノワグマ管理計画.岩手県,盛岡市,31pp.

宮城県

山形県

  • 山形県.2022.第4期 山形県ツキノワグマ管理計画.山形県,山形市,45pp.

近畿北部

  • 兵庫県.2022.第2期ツキノワグマ管理計画.兵庫県,神戸市,13pp.

東中国

  • 兵庫県.2022.第2期ツキノワグマ管理計画.兵庫県,神戸市,13pp.
  • 鳥取県.2022.鳥取県第二種特定鳥獣(ツキノワグマ)管理計画.鳥取県,鳥取市,31pp.

西中国

  • 島根県.2022.第二種特定鳥獣(ツキノワグマ)管理計画 ー 西中国山地ツキノワグマ地域個体群の保護管理 -.島根県,松江市,43pp.