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クマ棚とは? 野外観察のポイントについて解説|ツキノワグマ

 ツキノワグマが樹上で堅果類(ドングリ類)などを食べる際、枝先まで移動する事ができないため、樹上で結実した枝をたぐり寄せて採食します。折れた枝が樹上に鳥の巣のように積み重なったものを『クマ棚』と呼ばれています。落葉広葉樹林帯では晩秋の落葉後になるとクマ棚が確認しやすくなります。

クマ棚とは?

 クマ棚はツキノワグマが樹上で堅果類(ドングリ類)などを食べる際に作る枝葉の集まりのことです。ツキノワグマは樹上で実を食べるとき、太い枝に座りながら周囲の細い枝を折りたたんで寄せ集めます。この折り重なった枝葉が「棚」のように見えることから、『クマ棚』と呼ばれています。

 クマ棚ができる樹種は落葉広葉樹が多いため、晩秋になると落葉してクマ棚が観察しやすくなります。風雪等が強い地域では冬季に枝が落ちてしまうため、クマ棚が観察しにくくなります。

クマ棚ができる樹種

クマノミズキ

 クマノミズキ(Cornus macrophylla)はミズキ科ミズキ属の落葉広葉樹で本州・四国・九州に分布。

ウワミズザクラ

 ウワミズザクラはバラ科ウワミズザクラ属の落葉広葉樹で、北海道南部・本州・四国・九州に分布。日当たりのよい谷間や斜面などに生育しています。

ウワミズザクラにできたクマ棚

 クマ棚は特に堅果類(どんぐり類)が豊富な広葉樹林でよく見られます。秋(9〜11月)に多くみられ、冬から春にも観察することができます。落葉広葉樹林帯では落葉後にクマ棚が確認しやすくなります。ただし、風雪等が強い地域では冬季にクマ棚の枝が落ちてしまい、クマ棚が確認しづらくなります。

クリ

 クリ(Castanea crenata)はブナ科クリ属の落葉広葉樹で北海道南部・本州・四国・九州に分布。丘陵から山地に生育しており、雑木林を構成する樹木のひとつです。

クリにできたクマ棚

コナラ

 コナラ(Quercus serrata)は、ブナ科コナラ属の落葉広葉樹で、北海道・本州・四国・九州に分布。里山の代表的な樹種であり、落ち葉が堆肥に利用されたり、伐採後も萌芽更新するため薪炭林として利用されてきました。

コナラにできたクマ棚

ミズナラ

 ミズナラ(Quercus crispula)はブナ科コナラ属の落葉広葉樹で北海道・本州・四国・九州に分布。山地から亜高山帯にかけて生育しています。

ミズナラにできたクマ棚

クマ棚に見間違えやすいもの

ヤドリギ

ヤドリギとは

 ヤドリギは常緑多年生植物で、他の樹木の上に生育する寄生植物(半寄生)です。樹上で球体のように広がる特徴的な形状をしています。種子は冬季にキレンジャクやヒレンジャクが採食します。遠方から見るとクマ棚と見間違えることがあります。

クマ棚とヤドリギの見分け方

 クマ棚はツキノワグマが樹上でドングリなどを食べる際に作る枝葉の集まりで、枝先が折れているのが特徴です。一方、ヤドリギは寄生植物で常緑であるため冬でも葉をつけている。また、形状も球体のような形が多い。

 また、クマ棚ができた樹木の幹には、クマがよじ登った際に残した爪跡が見られることがあります。ヤドリギとクマ棚は共に晩秋から冬にかけて観察しやすくなります。

  • クマ棚は枝先が折れているが、ヤドリギは残っていることが多い
  • クマ棚は枯れているが、ヤドリギは常緑
  • クマ棚は樹皮に爪跡がついていることがある

秋季の登山時の注意点

 秋季は登山に最適な季節ですがツキノワグマは冬眠前に大量の食料を確保するため、堅果類が豊富な広葉樹林で頻繁に出没する季節でもあります。そのため、登山道周辺でも遭遇リスクが高まります。筆者も登山中にツキノワグマが樹上から降りてきたことがありました。

 そのため、登山中はクマとの不意の遭遇を避けるため、鈴やラジオを携帯し人間の存在を知らせることが重要です。また、クマスプレーを携行し万が一の事態に備えることも必要です。

まとめ

 クマ棚は、ツキノワグマが樹上でドングリなどの堅果類を食べる際に作る枝葉の集まりです。クマは太い枝に座り、周囲の細い枝を折りたたんで寄せ集めるため、「棚」のような形状になります。

 主に落葉広葉樹に作られるため、晩秋(9〜11月)になると落葉により観察しやすくなるため、登山等で見かけた場合は観察してみるのはいかがでしょうか。

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